【NY市場】ドル円は111円台前半で振幅 手掛けづらく方向感を失う

 きょうのNY為替市場でドル円は111円台前半での推移が続いた。きょうの為替市場は欧州通貨が買われており、相対的にドル売りが優勢となっている。しかし、円売りも出ていたのであろうか、ドル売り・円売りの中、ドル円は111円台前半での小幅な振幅に終始した。NY時間のレンジは20銭程度。

 FRBの正常化に向けたタカ派姿勢と、インフレ鈍化懸念が混在する中、ドル円も手掛けづらく方向感を失っているようだ。テクニカル的には10日線と21日線のゴールデンクロスを示現しており、ローソク足のチャートを見ても、6月15日に長大陽線をつけ反転し、111円台で上値は止められているものの、連続で十字線を描いて高止まっている。もう一段上がありそうなチャートではあるが、どうもその気配はきょうのところは無かった。

 この日はブラード・セントルイス連銀総裁とメスター・クリーブランド連銀総裁の講演が伝わっていた。ブラード連銀総裁は前日のインタビューと同様に慎重姿勢を示していたが、メスター総裁はタカ派な姿勢を堅持していた。特に大きな反応を見せることもなかった。

 また、朝方に米新築住宅販売件数が発表され、予想を上回る内容となっていた。しかし、市場はさほどポジティブに捉えていないようだ。住宅価格が過去最高水準に上昇しており、低価格帯での供給がタイトな状況となっていることが示唆されている。

 一方、ユーロドルは1.12ドル台を回復した。この日発表になったユーロ圏のPMIは強弱まちまちだったものの、ネガティブな反応は見せていない。全体的にサービス業は予想を下回っていたものの、製造業は好調を維持しているようだ。

 短期的には調整する可能性もあるものの、政治リスクも後退していることから、中長期的にはもう一段の上値が見込めるとの指摘も大手欧州系銀から聞こえていた。

 また、きょうはドラギECB総裁がブリュッセルで開催されたEU首脳会談に出席しており、「成長は加速しつつあり、失業は2009年以来の低水準だが、インフレが上がってこないため今のところ金融政策に変更はない」と発言。「低インフレ長期化の原因は、賃金の伸び悩みと質の低い職だ」とも指摘していたという。

 きょうは円安も見られたことから、ユーロ円に二重の追い風が吹いており、124.70付近まで一時上昇している。10日線と21日線のゴールデン・クロスが再び示現しそうな気配だ。

 なお、ECBはイタリアベネト州の銀行2行が破綻したと発表した。イタリア政府も預金は保護など協議を行うようだが、特にユーロの反応はなく、ユーロドルは1.12手前での推移が続いていた。

 ポンドも堅調な動きを続けており、ポンド円は一時141円台後半まで上昇する場面も見られた。きょうの上げで21日線を回復してきており、来週以降も水準を維持できれば、10日線と21日線のゴールデン・クロスも示現しそうな気配も出ている。

 今月の金融政策委員会(MPC)では、利上げを主張した委員が、これまでのフォーブス委員に加え2名増え、5対3での据え置き決定となっていた。それを受け市場参加者の一部には、次回の8月MPCでの0.25%の利上げの可能性を指摘する向きもいるようだ。8月はインフレ報告が発表になる月でもある。ただ、利上げは難しいのではとの意見も多いようだ。

みんかぶ「KlugFX」 野沢卓美
Source: klug

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