きょうのNY為替市場でドル円は下値模索が強まっており、一時111.55付近まで下落した。プラス圏で推移していた米国債利回りがNY時間に入って一時下げに転じたことをきかっけにドル円は見切売りが強まりストップを巻き込んで下落。200日線、100日線を割り込む動きだったが、下値では押し目を拾う動きも見られ、111.90付近まで下げ渋っている。米株が堅調に推移していることや、米国債利回りもプラス圏を維持したことがサポートしたようだ。
明日のECB理事会を控えてユーロは利益確定売りが優勢で、ポンドも軟調。全体的にドル売りが強まっている気配はないが、先週のイエレンFRB議長の議会証言や米消費者物価(CPI)を受けて、米インフレ鈍化や早期利上げ期待が後退しており、112円台が重くなっていたことから見切売りが出たもの思われる。
一方、金曜日に日銀決定会合が開催されるが、日銀と各国中銀との出口戦略への温度差は拡大しており、市場では円売りがテーマになっている。円安を期待している投資家にとっては、押し目買いの好機と見ているのかもしれない。
ユーロドルは利益確定売りが優勢となった。明日のECB理事会を控えて積み上がっているロングポジションを調整する動きが出ているようだ。ドルも買えない、円も買えない、そして、前日の英消費者物価(CPI)を受けてポンドも積極的には買えない中、資金は再びユーロに向かっている。
明日のECB理事会だが、政策変更は何もないことが確実視されている。注目は声明やドラギ総裁の会見となりそうだ。市場では出口戦略に向けて文言を一歩前進させると見られているものの、大きな変更はなく、慎重姿勢も同時に強調する発言になるのではとの見方が多い。
先日、ポルトガルのシントラで開催されたECBのフォーラムでのドラギ総裁の発言を受けての市場の反応に非常に警戒感を持っているという。そのときはユーロはもちろんのこと、ドイツ国債利回りも急上昇していた。ただ、市場はある程度織り込んでいる印象で、慎重姿勢を強調する発言の内容次第ということが言えそうだ。
為替市場はユーロ高への期待感のみが先行する中、発言のトーン次第ではユーロ買いが加速する可能性もある。ただし、かなり強く慎重姿勢を感じ取れる発言であれば、ユーロロングは過熱ぎみでもあるだけに、一旦調整の動きが強まるリスクも留意する必要がある。非常に未知数だ。
一方、ポンドは上値の重い展開。ポンド円は一時145円台前半まで下落する場面も見られた。今週発表の英消費者物価(CPI)が弱い内容だったことで、英利上げ期待は後退し、ポンドは戻り売りが優勢となっている。一時高まっていた英利上げ期待だが、ここにきて方向感が見えづらくなっているようだ。インフレ懸念は根強いものの、足元の生産や消費の経済指標がその期待を正当化しない状況が続いている。今月発表の鉱工業生産も予想外の減少だった。
その意味では明日の6月の英小売売上高は注目。前回5月分は予想外の減少となり、売上高(燃料含む)は前月比で1.2%減少していた。昨年の英国民投票以降のポンド安で物価高が、消費にブレーキをかけている姿が浮き彫りになっている。今回は反動増で0.4%増が見込まれているようだ。
もし、今回も弱い数字であれば、一部で予想されている8月の金融政策委員会(MPC)での利上げ期待は完全に後退するものと見られる。なお、英小売売上高は数量ベースの統計。
みんかぶ「KlugFX」 野沢卓美
Source: klug
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