【NY市場】ショックから期待に変化 ドル円は105円台後半まで回復

 きょうのNY為替市場はドル買いが強まっている。米大統領選挙でトランプ氏が新大統領に決まり、予想外の展開にショックが走り東京時間に乱高下していた。ただ、東京時間の投げ売りが一巡すると逆に買戻しが強まり、NY時間には逆にドル買いが加速している。

 要因として、トランプ氏の勝利後の初の演説で、選挙期間中に言及していた外交や貿易政策、為替操作、メキシコ移民などについての言及がなく、融和的な内容だったことや、中央銀行の介入を警戒した動きなどもあったようだ。

 しかし、一番の要因はトランプ氏の経済政策への期待のようだ。ネガティブ・キャンペーン合戦で経済政策についてはあまり取り上げられなかった印象も強いが、トランプ氏は、レーガン元大統領以来の大型減税と規制緩和、そして、貿易政策をテコに、10年間で2500万人の雇用を創出し、3.5%成長を実現させると言及している。

 減税策については、法人税や所得税の税率の大幅な引き下げ、そして、控除の拡充、相続税の廃止などがある。また、インフラ整備の拡充や防衛支出の増大も公約に掲げている。更にTPPからの撤退や中国に対する圧力で米製造業の輸出拡大を図るとしていた。実現性のほどは未知数ではあるが、議会も共和党が占めたことから、期待値はそれほど低くはないようだ。財政拡大やインフレへの期待から、米10年債利回りは2%台を回復し、ドル買いを加速させている。

 きょうの市場はトランプ氏の勝利を、ショックから期待に上手く変えたようだ。

 なお、トランプ氏が勝利ならば、12月の米利上げ期待に影響が生じるとの見方も一部には出ていたが、CMEがFF金利先物の取引から算出しているFEDウォッチを見ると、12月の利上げ確率は81%と、現状では全く影響は出ていない。

ドル円は東京時間に101円台前半まで急落していたが、NY時間には105円台後半まで上昇し、安値から450ポイント超のリカバリーとなった。

 米10年債利回りは一気に2%台を回復しているが、一方で日本国債は日銀がイールドカーブ操作を導入し10年債利回りをゼロ付近に固定させることをコミットしていることから、日米の金利差拡大期待が高まる。その意味でも明日の日本国債の動きは注目となりそうだ。

 ユーロドルは1.0930近辺に下落。東京時間には1.13ちょうどまで急伸していたが、その後はドルの買戻しが活発となり、ユーロドルは戻り売りが強まった。

 ユーロに関しては今回、アメリカ・ファーストのトランプ氏が勝利したことで、来年以降の欧州の政治への不透明感も指摘されている。欧州も来年は仏大統領選やドイツ総選挙など大きな政治イベントが控えている。その候補者の中にはEUからの離脱を唱えるナショナリズム的な主張もあり、今年の英国と合わせて、場合によってはEU崩壊のリスクが強まるとの指摘も聞かれる。選挙中にそのような声が勢力を増すようであれば、ユーロにとっては下押し圧力となりそうだ。

みんかぶ「KlugFX」 野沢卓美

Source: klug

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