【NY市場】イルマ警戒でドル円は一時年初来安値更新 ドラギ総裁のユーロ高けん制も反応なし

 きょうのNY為替市場は本日もドル売りが強まっている。朝方はECB理事会に市場の注目が集まっていたが、それを通過してドルは更に下値模索を加速させた。

 米国債への逃避買いが強まり利回りの下げが止まらない中、10年債は年初来の最低水準を更新。それを受けてドル円はストップを巻き込んで一時108円ちょうど付近まで下落し年初来安値を更新している。

 米国ではハリケーン「イルマ」への警戒感が高まっている。カリブ海を北西に進んでおり、勢力は最大級の「カテゴリー5」に発達。既に通過したカリブ海の諸島では甚大な被害が出る中、週末にはフロリダ州に上陸する恐れがあり警戒されている。

 今回のイルマの米経済に与える影響について1250億ドルの被害を見積もる向きもいるようで、先日の「ハービー」とあわせて第3四半期の米GDPへの影響は免れないとの見方も多い。実際、この日発表された新規失業保険申請件数がハリケーン「ハービー」の影響で急上昇していた。

 上記いずれも週末に向けたリスクとして警戒されており、米国債買い・ドル売りに繋がった模様。

 一方、ユーロドルはこの日のECB理事会を受けて1.20ドル台に上昇。政策は据え置きだったもののドラギ総裁が会見で、次回10月の理事会での出口戦略の具体策発表を示唆したことでユーロは買いに弾みがついた。一部ではECBは12月まで具体的な計画を決めないとの観測報道も流れていたことから、10月発表の可能性に言及したことはユーロにとってはポジティブ・サプライズとなった模様。

 同時にドラギ総裁はユーロ高について、「最近のユーロのボラティリティの高まりは不確実性の源泉。将来の政策決定には為替も考慮する必要がある」と述べるなど、ユーロ高への警戒感を予想以上に強調していたものと思われる。来年から開始する出口戦略は予想以上に緩やかなものになるのではとの見方から欧州債市場では利回りが低下した。

 ただ、為替市場は聞く耳を持たなかったようだ。ドラギ総裁がユーロ高けん制を強めてもユーロの買いは続くとの見方も少なくなかった。インフレ鈍化によるFRBの利上げ期待の後退や、トランプ政権への不信感などからドルに手を出しにくい中、結局、ユーロへの資金流入をしばらく続けざるを得ないとの見方が根強いのもしれない。

みんかぶ「KlugFX」 野沢卓美
Source: klug

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