きょうのNY為替市場でドルは上に往って来いの展開となった。トランプ氏の経済政策への期待は一旦棚上げといった雰囲気ではあるが、足元のファンダメンタルズの好調さが、FRBの利上げ期待をサポートしている。朝方発表された12月の米小売売上高は予想は下回ったものの、堅調な個人消費を反映しており、市場の安心感につながったようだ。
12月はガソリン価格が上昇していたことや、自動車販売も好調だったこともあって、前月比で0.6%の上昇となった。また、GDPの算出に使用される食品、自動車や建材、ガソリンを除いたコアのデータは0.2%の上昇となった。こちらはさほど強い印象まではないが、しっかりとプラス圏を維持している。
この結果を受けて為替市場ではドル買いが強まり、ドル円も115円台半ばまで上昇した。ただ、午後になってドルは伸び悩む展開となっており、ドル円は朝方の水準である114円台に再び値を落としている。
来週のトランプ氏の大統領就任式まではポジションを動かしたくないようで、ドル円も115円台に入るとポジション調整の売りが出るようだ。NY市場は3連休を控えていることもあり、積極的にポジションを取る動きにも乏しい。まだ、短期筋が中心のといったところで、腰の据わった買いは入ってこないようだ。
ユーロドルは序盤に1.06を割り込む動きも見られたが、後半になって下げを取り戻している。きょうは1.0675近辺まで一時上昇していたが、前日の高値は突破できずに伸び悩んでおり、上値への慎重さは変わらない印象だ。
来週はトランプ氏の大統領就任式が最大のリスクイベントだが、その前の日に今年初のECB理事会が予定されている。今月発表になったインフレ指標が上昇したことから、ECBの早期出口戦略の可能性を見出す動きもある。しかし、来週の理事会ではその気配は見せずに、ドラギ総裁の会見も含めてECBは、方向感を出さずに無難な通過を目指すのではとの指摘も聞かれる。
ドイツの12月の消費者物価(速報値)は前年比で1.7%に上昇していたが、これを受けてドイツの経済界からは利上げを要請する動きも出ている。しかし、インフレが上昇したとはいえ、エネルギー価格上昇による輸送コストの上昇が主因で、基調はまだ弱いとする意見もある。インフレ期待の上昇が続くかどうかはまだ、判断をつけ難い状況にはある。
ポンドは上下動。ポンド円は一時140円台に上昇したものの、後半になってドル円が失速したことで、139円台半ばに値を落とす動き。きょうのポンドは基本的に方向感はなかったが、上値が重い印象に変わりはない。
一部報道でメイ首相は、EU離脱の通告を数ヵ月遅らせざるを得ないとの観測も出ている。北アイルランド政府の連立が崩壊しそうで、直ちに選挙が実施される可能性が高まっている。そうなると数ヵ月間は選挙期間となることから、メイ首相は北アイルランドからの承認を得ることができず、EU離脱に通告しても違法になる可能性があるためとしている。
なお、来週火曜日にメイ首相がEU離脱に関するスピーチを行う予定となっており注目される。また、来週は英消費者物価の発表も予定されており、トランプ氏の米大統領就任式を控えて、ポンドも忙しい週となりそうだ。
みんかぶ「KlugFX」 野沢卓美
Source: klug
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