【NY市場】強い米雇用統計もドル買いの反応限定的

 きょうのNY為替市場、この日発表になった米雇用統計は予想を上回る強い内容となったものの、ドル買いの反応は限定的でむしろ、ユーロやポンドなど欧州通貨買いに結びついている。

 4月の米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が21.2万人と予想を上回る強い内容となった。失業率も4.4%まで低下している。完全雇用に接近している中で、20万人を超えるNFPの増加数はかなり強い印象。前回3月分が弱い内容だったことから反動もあったものと思われる。

 ただ、発表直後の市場の反応は意外にも、米国債利回りは低下し、ドルも売りで反応していた。前回分が下方修正されたことや、平均時給が前年比で2.5%と予想(2.7%)を下回ったことなどが挙げられている。しかし、今週のFOMC声明でFRBは、第1四半期の成長減は一過性で、雇用も改善が続いていると言及していた。今回の雇用統計はその見方を裏付ける内容と言える。

 どうも市場は、欧州通貨買いの理由を探している雰囲気があり、好調な米雇用指標が欧州通貨買いに摩り替えられてしまったところもあるようだ。良好な米経済がユーロ圏の経済にも波及すると見ているのかもしれない。

 ドル円は底堅い動きを見せたものの上値を止められ、112円台半ばでの振幅が続いた。ただ、終了間際にS&P500が最高値を更新して引けたこともあり、買いが強まり112円台後半で大方の取引を終了している。

 昨年12月から4月までの下降派のフィボナッチ38.2%戻しの水準が112.15付近にある。アジア時間に原油急落で一時112.15付近まで下落していたが、一応サポートされた格好。方程式通りであれば、50%戻しの113.35まで上昇する可能性がある。来週は東京勢が連休から帰ってくるが、試しに行くか注目される。

 そのような中、ユーロ円は一時124円台に上昇。曜日に予定されている仏大統領選挙の最終投票で、中道派のマクロン氏勝利を織り込む動きも出ているものと思われる。一方でドル円も底堅い動きをしていることから、二重の追い風が吹いている状態。

 きょうの上昇でユーロ円は、トランプ相場の高値である昨年12月の高値水準に顔合わせしている。目先の上値目標としては、2015年6月高値から2016年6月安値(英国民投票)の下降波のフィボナッチ38.2%戻しの水準が125.25円付近に来ている。心理的節目の125円と合わせて来週以降、試すか注目される。

 ただ、仏大統領選で見込み通りにマクロン氏が勝利したとしても、ユーロ自体はかなり織り込んでいるので、一旦材料出尽くし感が出る可能性もあり注意したい。

 ポンド円は昨年12月以来の146円台に上昇。次の上値目標は昨年12月につけたトランプ相場の高値148円台半ばが意識される展開となっている。来週は英中銀の金融政策委員会(MPC)が開催され、インフレ報告も発表される。英中銀は先週、欧州離脱決定を受けて昨年8月に発表した100億ポンドの社債買い入れを完了したことを明らかにした。

 来週のMPCは、政策金利、量的緩和(QE)の枠など、政策は据え置きが確実視されているが、一部ではEU離脱の交渉が本格的に始まれば景気を圧迫し、いずれ英中銀は量的緩和を拡大してくると見ている向きも根強くいるようだ。その意味でもインフレ報告は注目したい。

 また、日曜日に仏大統領選を通過すれば市場は次に、6月8日の解散総選挙の行方を本格的に考え始めるものと思われる。現状の世論調査ではメイ首相率いる保守党が優勢。

みんかぶ「KlugFX」 野沢卓美
Source: klug

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