【NY市場】ドル買いが優勢もドル円は上値の重い展開

 きょうのNY為替市場は、全体的にはドル買いが優勢ではあったものの、ドル円は上値の重い展開も見られた。NY時間に入って売りが強まり、一時111.30近辺まで急速に下落する場面も見られた。原油がきょうも大幅安となっており、米株や米国債利回りも下げる中、ドル円も戻り売りに押された格好。朝方はムニューシン米財務長官の発言をきっかけに売りが強まる場面も見られた。

 ただし、長官の発言自体は目新しいものはなかった。しかし、下値ではロング勢の押し目買いも入るようで水準は維持している。上値も重いが下値も堅いといったところのようだ。

 きょうの東京勢はゴトウビということもあり、東京時間の午前には一時111.80近辺まで上昇していた。しかし、それ以上の上値は止められている。111.80から上には実需やオプション絡みなど、売りオーダーも相当程度観測されており、慎重になっているようだ。100日線も111.85付近に控えている。

 上値を突破して行くためには強い米経済指標が必要。その意味では明日の5月の米中古住宅販売件数のほか、原油動向をチェックするうえでも米週間石油在庫統計の発表が注目される。直近は米住宅指標に対する市場の反応は限定的なことが多かったが、先週の弱い米住宅着工に大きな反応を見せており、明日の中古住宅販売は数字次第では反応が見られるかもしれない。

 一方、ユーロドルは1.11台前半に下落。NY時間に入ってユーロは戻り売りが強まった。特段のユーロ売りの材料は見当たらなかったが、上値の重さにロング勢も日本時間0時のロンドンフィキシングにかけて見切売りが出したものと思われる。また、ユーロ円も売り優勢で一時123円台に下落。きょうは124円ちょうどの21日線付近まで下落している。

 先週のFOMC以降、ユーロドルは従来ほどの勢いが無くなってきている。先週からきのうにかけて強いサポートとなっていた1.1130ドル水準を一時下回った。

 目先の下値サポートは5月30日安値の1.1110付近。この水準をブレイクし、1.10台に突入するようだとチャート的にはダブルトップが形成され、一旦、ピークアウトの可能性も高まる。

 ただ、市場はECBの量的緩和の拡大ペース縮小への期待を高めており、9月にも打ち出し、来年から実施との見方も少なくない。景気回復基調やデフレ懸念も後退していることが表向きのサポートとなっているが、実はECBが出口戦略へ舵を切りたい本当の理由は、ファンダメンタルズよりも、月間600億ユーロ規模で購入を続けるための債券が品薄になっていることが真の背景との見方も出ているようだ。GDPや消費者物価の回復は渡りに舟なのかもしれない。

 ポンドは軟調。きょうはロンドン時間から売りが強まり、見切売りが加速した格好。きっかけはカーニー英中銀総裁が「いまは利上げする時ではない」と利上げに消極的な発言をしたことで売りが強まった。先週の英中銀政策委員会(MPC)では、利上げを主張し据え置きに反対に回った委員が2名増え、5対3で据え置きが決定されたことで市場は驚きを強めた。なお、3名のうちの1名は以前から利上げを主張しているフォーブス委員だが、同委員は今月末で退任する。

 カーニー総裁の言及に市場も利上げ期待を後退させた格好だが、英中銀の場合、政策決定と総裁の投票が逆になることがキング前総裁の時に何度かあったという点は留意して置きたい。なお、ポンド円は一時140円台半ばまで下落。きょうは一本調子の下げを演じ、21日線に跳ね返される展開となった。

みんかぶ「KlugFX」 野沢卓美
Source: klug

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