きょうのNY為替市場は前日に引続きドル売りが優勢となった。FBIによるクリントン氏のメール問題の再調査表明以降、市場は米大統領選への不透明感を強めている。トランプ氏に対する支持率が高まっているとの調査も流れ始めており、市場もトランプリスクを意識せざるを得なくなっている模様。
きょうは午後にFOMCの結果が発表され、予想通りに政策は据え置かれた。注目の声明では「利上げの根拠は引き続き強まっていると判断。更なる進展をしばらく待つ」という9月のFOMC声明の文言をそのまま踏襲した格好となっている。景気判断など他の部分についても、9月とほぼ変わらずだった。一部では12月利上げに向けて、もう少し踏み込んだ表現も期待されていただけに肩透かしの格好となっている。
変化があったとすれば、前回利上げを主張していたローゼングレン・ボストン連銀総裁が賛成に回っていたこと。同総裁は直近の発言で12月利上げを強調していただけに、今回は据え置きで良いということなのであろう。少なくともハト派に転じたわけではなさそうだ。
為替市場は発表後に上下に振幅したものの、大きな動きには至っていない。12月利上げ期待は依然として強いままだ。
ドル円は下値模索が続き、一時103円割れを試す動きも見られた。103円ちょうど付近には実需の買いオーダーなども観測され、103円台は維持された格好だが、次第に上値は重くなってきている。
きょうの下げで21日線を完全に割り込んでおり、下向きのトレンドも見え始めている。目先は103.00がひとまずサポートとして意識されるが、その下は102.75付近に100日線が来ている。
ドル売りが強まる中、その風を最も受けているのがユーロであろう。ユーロドルは前日に引き続き一本調子の上げを続け、一時1.11台まで上昇した。100日線が1.1135付近に来ており、その水準をうかがう展開が見られている。米大統領選への不透明感がポジション解消を促しており、特に対ドルでのユーロショートの解消が活発に出ているものと思われる。
この日発表のユーロ圏の経済指標は好調な内容が相次いでいた。特にドイツの指標は改善が続いており、失業保険申請率は6.0%と歴史的水準まで低下している。この結果を受けドイツからは、ECBは量的緩和(QE)を縮小すべきとの声も強まっているようだ。
ECBは12月の理事会でQEの期限延長を示唆しているが、同時にQE縮小の可能性もちらつく中、もし、クリントン氏が市場の期待通りに米大統領に当選したとしても、安易にユーロショートを積み増すべきではないとの見方も出ている。
ポンドも途中から伸び悩んだものの、対ドルで買戻しが続いている。明日は英中銀金融政策委員会(MPC)が開催される。ポンド安によるインフレ期待の高まりと、先日発表になった第3四半期の英GDPが予想を上回るなど、EU離脱問題の影響もなく好調な指標が相次いでいることから、今回は政策金利の据え置きが予想されている。
焦点は同時に発表される四半期インフレ報告となりそうだが、ポンド安によるインフレ期待の高まりからインフレ見通しに関しては上方修正してくるものと思われる。ただ、注目は成長見通しであろう。先日のGDPが好調な内容だったことから、2016年については上方修正してくるものと思われるが、2017年についてはどう見ているのか注目されるところだ。
毎月GDP見通しを発表している有力シンクタンクの英国立経済社会研究所(NIESR)がレポートを発表しており、カーニー総裁の任期は2019年6月まで延長され、ちょうど英国がEUを抜ける時期まで舵取りをすることが決まったが、政策金利はそれまで据え置かれ、次の英中銀の行動は逆に利上げになるとの見方を示していた。ポンド安でインフレが高まり、来年の下期には4%まで上昇する可能性もあるという。利上げのタイミングとしては2019年の第3四半期の可能性が見込まれるという。
みんかぶ「KlugFX」 野沢卓美
Source: klug
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