きょうのNY為替市場は後半になってドル売りが優勢となった。ただ、特段の悪材料は見当たらない。日曜日のイタリア国民投票でレンツィ首相の改正案が否決され、首相も辞意の意向を示した。リスクシナリオのケースで、市場も混乱していたが、直ぐに落ち着きを取り戻している。事前に織り込んでいた面もあったようだ。
また、この日のISM非製造業景気指数が予想を上回る強さで、特に雇用指数が昨年10月以来の高水準となり、サービス業の雇用は強さが堅持されている。
しかし、後半になって上昇していた米国債利回りが突如失速し、ドルも追随した格好となった。トランプ氏の提唱する大規な減税やインフラ整備への期待から、米国債利回りが急上昇し、ドル高も強まっている。インフレ期待の高まりから米10年債の期待インフレ率を示すブレーク・イーブンは一時2%を超える場面も見られ、昨年前半につけた高値を上抜いてきている。
トランプ氏の大統領就任までは、まだ、しばらく時間がある中で、現段階では、更なる上値追いには、トランプ氏の経済政策の確認が必要な段階に差し掛かっているのかもしれない。
ドル円はISM指数発表後に買いが強まり、一時114.80近辺まで上昇。先週の高値に並んだ。しかし、その後、113円台前半まで急速に下落している。115円までの上値抵抗が強い中、米国債利回りの下げが利益確定売りのタイミングとなった模様。一方で、113円台前半に入ると押し目買い意欲も強いようで、その後は113円台後半まで買い戻される展開となった。
先週末に米商品先物取引協会(CFTC)が発表したIMM投機筋の円の建玉は約1年ぶりに売り越しに転じている。経験則では一旦、ポジションが逆転すると、しばらく続くケースも多く、今回はどうか注目される。
ユーロは買い戻しが強まり、ユーロドルは1.08近くまで上昇。21日線を突破してきている。イタリア国民投票へのネガティブな反応は一時的だったことから、ひとまずユーロは買戻された模様。
ただ、イタリアの政局は来年序盤にも総選挙を実施する可能性が出てきている。EU離脱を主張する新興勢力の「五つ星」などの極右政党が勢力を増すようであれば、ユーロ圏の混乱は高まりそうだ。
ポンドの買戻しが続いており、ポンド円は一時146円台まで上昇する場面も見られた。以前ほどポンドに対する悲観的な見方が後退する中、この日発表になった英サービス業景況感指数も好調な内容となっている。
きょうはカーニー英中銀総裁の講演が伝わっていたが、高インフレを許容するにも限界があり、金融政策はどちらの方向にも振り向けることが可能との認識を示していた。
来年はポンド安からのインフレ期待も高まりそうな気配ではあるが、英EU離脱の交渉が本格化することも予想される中、利上げの選択肢はまだ無いであろう。しかし、少なくとも、利下げの選択肢も大きく後退しているようだ。
みんかぶ「KlugFX」 野沢卓美
Source: klug
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